星野源 3rdアルバム STRANGER レビュー
復活というか、倒れたというか、生死の狭間のアルバム
- 3rd 2013年5月1日 Strangerオリコンチャート 2位。
このアルバムのレコーディングを終えた時、源は倒れた。
2012年12月22日、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血だった。
倒れた当時の様子などは「蘇える変態」に詳しく生々しく書かれている。
全体的にファーストアルバムから続くのほほんムードの曲が多い。
化物
目まぐるしくドラムとオルガン(ハモンド)がうなる軽快な曲。
川勝正幸さんを想って書いたそうだが、源自身が倒れてしまったため、まるで自分のような歌となってしまった。
「地獄の底から次の僕が這い上がるぜ」
そうだ、この世には地獄から這い上がるような日々が普通に転がっている。
勢いよく短く終わる。
文字通り、新しい星野源が這い上がってきたのだ。
聴いていると、なにか鬼気迫るものを感じる。
この曲をレコーディング直後に倒れたそうです。
ワークソング
昭和歌謡を思い起こさせる、懐かしく爽快なアレンジ。
ストリングスとホーンが気持ちいい。
「働け この世の全て背負え 定時まで」と歌う。
いやいや、定時で終わるなんてことはないですよ。
何度も聴きたくなるクセになる曲。
夢の外へ
(資生堂アネッサ2012CMソング)
この曲も曲調はワークソングと同じ感じ。
懐かしい感じがする。
PVはひたすら楽しいですね。
ダンスの素晴らしさはマイケルイズムを感じます。
フィルム
(映画『キツツキと雨』主題歌)
この映画、観たはず。
小栗旬くんが映画監督の役で役所広司さんがおもしろいの。
ほのぼのする曲。
PVはマイケル・ジャクソンのスリラーをそのままやらない感じがいい。
どうせなら 作れ作れ
目の前の景色を
そうだろ
ツアー
オシャレに言うなら、オーガニックソウルのような雰囲気。
スカート
まったり弾き語り。
詞はエロいらしい。
生まれ変わり
ほのぼのゴスペル。
後半の盛り上がりがグッとくる哀愁がある。
何度も何度も繋いだ手が
いつまでも輝けばいいな
パロディ
なんともいえない牧歌的昭和風味なアレンジなのがニクい。
昭和風味というのは、
ポップスにちょっとジャズの感じを入れると出来上がるのですが、うまくアレンジしてるなぁ。
生録って感じがいい。
季節
「誰かと微笑んだその季節思い出す」
過ぎてゆく季節と記憶を感じながら、
ニヤリと笑いながら演奏している様子が思い浮かぶ。
レコードノイズ
Fender Rhodesの音色が心に響く。
記憶の中に潜っていくような感覚がする。
知らない
ここまでアルバムを通して聴くと、ほんとにぼーっとしてくる。
いい意味で。
さよならはまだ言わないで
物語は続く 絶望を連れて
ある車掌
(NHK Eテレ「おじゃる丸 スペシャル 銀河がマロを呼んでいる 〜ふたりのねがい星〜」エンディングテーマ)
「銀河鉄道の夜」をモチーフに書かれた曲。
この曲でこのアルバムが終わってしまうのが名残惜しくなる。
[Secret Track]Stranger
ボーナストラックとなっているが、Strangerというタイトルが付いている。
宅録なのだろうか?弾き語りが収録されています。
化物〜ワークソング〜夢の外へ、の疾走感、後のほのぼの感、コーヒーでも飲みながらぼーっと聴きたいアルバム。
どの音も生音だし、どの音も殺しあわずにまとまっている。
本当にいい音で録ってあるなぁ。
4thアルバムYELLOW DANCERがダンスアルバムなので、そこからはファンになった人は拍子抜けするかもしれない。
カーティス・メイフィールドに例えると、Move On Upあたりでハマった人が、さかのぼってImpressionsあたりを聴いてみると、全然印象が違って聴き込んでいくうちに「これがカーティスらしさか!」ってあらためて気づくような。
星野源のアルバムをいろいろ聴いてみたけど、総評でいうとこのアルバムのポイントは高い。
前半3曲の勢いある曲から後半のまったりした感じまで、まるでまったりとした各駅停車の旅のような味わいがある。
何度聞いても味わい深いものがある。