あまり内容を知らずに「ルックバック」というアニメ作品を観た。
確か映画館の予告で観たと思う。
だからウォッチリストに入れていたんだ。
ルックバックを考察
藤本タツキ先生の『ルックバック』は、2021年に発表された短編漫画で、彼の代表作『チェンソーマン』とは異なる静かで内省的なトーンを持ちつつも、深い感情的共鳴を呼び起こす作品として多くの読者に評価されています。
この作品における作者の意図するメッセージを考える際には、物語のテーマ、キャラクターの描写、そして彼自身の作家としての視点からアプローチすることが重要です。
物語のあらすじとテーマ
『ルックバック』は、漫画を描くことに情熱を注ぐ小学生の藤野と、その才能に嫉妬しながらも影響を受けていく京本という二人の少女を中心に展開します。
藤野は自信満々で創作を楽しむ一方、京本は内向的で自己批判的ですが、卓越した技術を持っています。
物語は二人の関係が時間とともに変化し、やがて悲劇的な出来事(京本の死)を経て、藤野が漫画家として成長していく過程を描きます。
最終的に、藤野は過去を振り返り(”look back”)、京本との出会いが自身の人生や創作に与えた影響を再認識します。
主なテーマとしては、創作の喜びと苦しみ、他者とのつながり、そして過去との向き合い方が挙げられます。
59分のアニメなので、ひまつぶしにサクッと観ることができるコンパクトさも特徴です。
アニメ版の不自然な点としては、登場人物が少なく藤野や京本の家族が登場しない点だ。
短い時間の中、登場人物を少なくすることで、ストーリーをスッキリ集中して見せる意図があるのだと思う。
漫画版ではもう少し登場人物が多い。
「ルックバック」の意味とは?
ルックバック(LOOK BACK)とは、そのままの意味だと「後ろを見る」「背中を見る」という意味です。
そのほかには「過去を振り返る」「思い返す」「かえりみる」などの意味があります。
漫画の「ルックバック」も、この意味が漫画のテーマとなっていました。
ルックバックにおけるパラレルワールドの世界線
ルックバックをなんとなく観ていたら、本当に意味がわからなくなった。
ネタバレしてしまうけど、この記事を読む人はおそらく一度観たけど意味がわからなくて考察が読みたくて検索してきた人だろうと思って書きます。
不登校の同級生・京本が事件に巻き込まれた後、急に別のストーリーが展開される。
これがこの作品におけるパラレルワールドだ。
主人公・藤野が京本と共有した時間を別世界で回想するシーンが始まる。
藤野は京本が亡くなったの自分のせいではないかと自分を責める。
そして京本と別の世界があったのではないかと回想するのだ。
藤野はいつも京本を応援して気にしていたし、京本も藤野の背中を見て夢見ていたのだ。
そしてまた、現実に引き戻され、京本がいない世界に帰ってきて、藤野はまた黙々と漫画を描き始めるのだ。
藤野キョウの「シャークキック」は実在する?
藤野キョウとは、この作品の架空の漫画家で、東京人物の藤野と京本、ふたりの作家名である。
架空の漫画「シャークキック」は11巻まで発売され12巻は未発売のようである。
「シャークキック」は原作漫画の方で藤野キョウの作品として登場する。
10代でプロの漫画家デビューという非常に魅力的で夢のある話でシンパシーを感じる人も多いだろう。
漫画のルックバックは藤野の4コマ漫画からはじまる。
この4コマ漫画がなかなかおもしろい!
藤野キョウの合作としては「メタルパレード(準入選・賞金100万円)」のほかに「海のある町々」、「セミ人間」、「ミノムシ」、「もぐら少年」など17歳で7作の読み切りを描いているという設定。
実はこの藤野という女の子のキャラクター、藤本タツキ先生の生い立ちを調べると重なる部分があるのだ。
藤本タツキ先生の意図するメッセージを考察
こういった後悔は、もしかしたら誰でも身に覚えがあるかもしれない。
そこが多くの人に共感を与えるのだ。
いくら過去を振り返っても起こってしまった事実を変えることはできない。
でもそれを乗り越えて力強く生きる。
この作品からはそのような隠されたメッセージを感じました。
創作は個人の闘いであり、他者との共鳴でもある
藤野と京本の関係は、漫画を描くという行為が孤独な作業であると同時に、他者の存在や影響によって形作られることを象徴しています。
藤野が京本の才能に嫉妬しつつも刺激を受けるように、藤本は「創作とは自分自身と向き合うだけでなく、他人との比較や交流を通じて成長するプロセス」というメッセージを込めている可能性があります。
これは、藤本先生自身のキャリアや、他の漫画家との関わりを反映しているのかもしれません。
失ったものへの後悔と、それでも前に進む力
京本の死後、藤野が漫画を続ける中で過去を振り返るシーンは、失ったものへの後悔や悲しみを抱えながらも、それを創作の原動力に変えていく姿を描いています。
藤本は、人生における喪失や挫折が避けられないものであることを認めつつ、それでも前に進むことの大切さを伝えたかったのかもしれません。
この点は、藤本先生の作品全体に見られる「破壊と再生」のモチーフとも繋がります。
純粋な情熱の肯定
藤野が漫画を描く動機は、最初は純粋な楽しさや自己表現の欲求であり、それが物語の最後まで彼女を支える力となっています。
藤本は、商業的な成功や評価を超えて、創作そのものに内在する喜びや情熱を肯定しているように見えます。
これは、過酷な現実や競争が描かれる『チェンソーマン』とは対照的で、より個人的で内面的な視点からのメッセージと言えるでしょう。
「振り返る」ことの意味
タイトルの『ルックバック』は、過去を振り返ることの二面性を示唆しています。
藤野が京本との思い出を思い出すシーンでは、過去が現在の自分を形成していること、そしてそれを受け入れることではじめて前に進めることが描かれています。
藤本は、読者に対して「過去を否定するのではなく、それと向き合うことで未来を描ける」という思いを伝えたかったのかもしれません。
藤野と京本の関係・成長と変化
京本の「私、藤野ちゃんに頼らないで、1人の力で生きてみたいの」っていうセリフにも共感を持って衝撃を受けるし、なんとか一緒に自分と一緒に活動したいという藤野の気持ちもわかりすぎる。
しかし京本の決意にまた感動してしまう。
京本は藤本と上京せずに山形の美大に通う決意をするのだった。
引き篭もりだった京本
京本は小学生の頃から引き篭もりで不登校だった。
引きこもりの人、引き篭もりがちの人、学校に行くのが嫌な人にも共感する人物設定だ。
漫画に没頭するあまり、同級生に敬遠されたり友達ができにくくなったりと、これも一部の人に共感される設定だ。
私自信、小学生6年生から高校生になるまで漫画やイラストを描き続けていたのでガチで共感した。
京本の死因とその意味
京本が巻き込まれた「山形美大生通り魔殺人事件」が起きた設定は2016年1月10日。
デビッド・ボウイが亡くなった命日でもあるが意図は不明。
藤野は「(漫画なんか)描いても何も役に立たないのに」とつぶやく。
これは、「漫画を描いても誰の役にも立たない」という、作家なら誰しも抱く気持ちを代弁しているのかもしれない。
いや、そんなことはないのだが、心の片隅にはチリのようにいつもある気持ちなのかもしれない。
京本が描いた4コマ漫画「背中を見て」を藤野が手に取るシーンから考察すると、もしかすると藤野が京本を助けるという回想シーンは、ふたりが共通して回想したパラレルワールドなのかもしれない。
ルックバックの事件は京アニが元なのか?
『ルックバック』に登場する事件が京都アニメーション放火殺人事件(以下、京アニ事件)を元にしているかどうかについては、藤本タツキ先生や集英社から公式な明言はないようです。
ただし、作品の描写や発表時期などから、多くの読者や評論家が京アニ事件との関連性を指摘しており、その可能性は高いと考えられています。
犯人が「俺の絵をパクりやがって」というセリフを口にし、創作に対する被害妄想が動機として示唆されています。
京アニ事件(2019年7月18日)では、犯人が「京都アニメーションにアイデアを盗まれた」と主張し、スタジオにガソリンを撒いて放火、36人の命を奪いました。
両者の動機に「創作の盗作」という共通点が見られます。
『ルックバック』は2021年7月19日に『少年ジャンプ+』で公開されました。
これは京アニ事件からちょうど2年後の翌日にあたります。
このタイミングが意図的であると解釈する声が多く、追悼や鎮魂の意図を連想させます。
また、1969年にアメリカで実際に起こった「シャロン・テート殺人事件」を扱ったクエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に似た映画のケースが最後のコマに書かれています。
実話に基づくストーリーの背景
ルックバック自体はフィクションだが、事実と結びつく部分がいくつかある。
藤本タツキ先生の出身地である秋田県が舞台で、京本が進学した山形の美術大学は実際には藤本先生の出身校である。
作者の意図するテーマの考察
漫画って誰の役にも立たないかもしれない。
だけど、漫画読んで泣いてくれたり笑ってくれたりする人が1人でもいれば、それが作家の原動力になる。
誰もが誰かの背中を見て成長する。
ルックバック。
まとめ
『ルックバック』のテーマは、創作を通じた自己発見と他者との絆、そして過去を受け入れて未来を描く力にあると解釈できます。
この作品は、漫画というメディアへのラブレターであると同時に、人生の悲喜こもごもを静かに肯定する物語です。
藤野と京本の関係を通じて、藤本は「誰かと出会い、影響し合い、別れを経ても、その足跡は消えない」という普遍的な人間経験を伝えようとしたのではないでしょうか。
アニメを見て原作も購入。
藤本タツキ先生の読み切り作品「さよなら絵梨」も購入。
病気で死を迎える母を毎日スマホで撮影する息子、その動画を映画にして学校で公開して主人公に起こる悲劇。
この作品も、死と向き合う人の物語で感動するところがありました。